ピアノの練習を始めるにあたって、「どの教本から始めればいいの?」「レベルが上がったら次は何を使うの?」と迷う方は多いのではないでしょうか。
ピアノ教本は目的や技術レベルによって選ぶものが大きく異なります。
今回は、ヤマハシステム講師の経験をもとに、初心者から上級者までのおすすめ教本を、紹介します。レベルはあくまでも目安です。教本の中にはレベルの範囲外の曲もあります。
独学で進めたい方やお子さまのレッスンに活用したい保護者の方にも役立つ内容だと思いますので、ぜひ参考にしてください。
途中でつまずかないためにも、適切な順序でステップアップしていきましょう。
ピアノ教本のレベル別進行表|一目でわかるおすすめルート
ピアノの上達には、目標に合わせて適切なレベルの教本を選ぶことがとても大切です。
以下の表では、ピアノの練習を導入期から上級レベルまで段階的に進めていく際に役立つ代表的な教本とその順序をまとめています。
「いま自分や子どもがどのあたりにいるのか」「次は何に取り組めばいいのか」を確認する参考にしてみてください。
レベル | 代表的な教本 |
---|---|
導入〜初級 | バーナム ピアノテクニック/ツェルニー リトル・ピアニスト・やさしいピアニスト/ピアノのテクニック/ブルグミュラー25の練習曲/ギロック こどものためのアルバム |
中級 | ツェルニー30番/ハノンピアノ教本/ブルグミュラー25の練習曲/ソナチネアルバム/バッハ インベンション |
上級 | ソナチネアルバム/ソナタアルバム/バッハ シンフォニア/ツェルニー50番/クラーマー=ビューロー 60の練習曲/モシュコフスキー15の練習曲/ショパンエチュード集 |
また、テクニック強化や音色のコントロールを磨きたい方には、指の独立や柔軟性を鍛えるハノンやスケールとカデンツなどの教本を併用すると効果的です。
目標に合わせて無理なくステップアップすることが、長くピアノを楽しむコツです。
初心者におすすめ!初級ピアノ教本の進め方
ピアノを始めたばかりの方や、導入期の教本(バイエルなど)を終えた方向けに、初級者向けのおすすめ教本を紹介します。
これらは、基礎的な演奏力や表現力を養いながら、次のステップへとつなげてくれる内容が特徴です。
バーナム ピアノテクニック
1曲が短く、動作に名前がついているユニークな構成で、子どもにも大人にも親しみやすい教本です。
「表現力」「タッチの基本」「指の独立性」を楽しみながら身につけることができます。
全4巻+導入書とミニブックがあり、進度に応じて使い分けができます。
ツェルニー リトル・ピアニスト
ツェルニーの中でも、特に初級者向けに構成された練習曲集です。
音の跳躍や指の動き、片手ずつの独立した練習など、初級段階で必要なスキルをしっかりと養えます。
バイエルを終えたタイミングで導入するのが効果的です。
ツェルニー やさしい20の練習曲
短期間で基本的なテクニックを効率よく身につけたい方にぴったりの構成です。
子どもだけでなく、大人の再学習にも適しており、練習の負担も軽めです。
ブルグミュラー25の練習曲
メロディが美しく、表情豊かな演奏を学べる人気の教本です。
それぞれの曲にタイトルがあり、イメージをふくらませながら練習できるため、表現力を養いたい人におすすめです。
初級〜中級向けの教本です。
ギロック こどものためのアルバム
アメリカの作曲家ギロックによる、子ども向けの美しい曲が詰まった一冊です。
発表会にも適しており、ブルグミュラー後半レベルに位置づけられます。
やや自由度の高い進め方が可能で、特にクラシック以外の音楽にも親しみたい方に向いています。
中級者向けピアノ教本|テクニックと音楽性を磨くステージ
初級を終えたら、より高度なテクニックや音楽的な理解を深める中級教本へとステップアップしていきます。
この段階では、演奏表現だけでなく楽曲の構造や様式への理解も求められるようになります。
ツェルニー30番
中級の入口として広く使われている練習曲集です。
テンポを正確に保ちながらスケールやアルペジオを安定して弾けるようになることを目的としています。
単調に感じることもあるため、目的意識を持って取り組むことが大切です。
ハノン ピアノ教本
指の独立性や粒のそろった音を出すための基礎練習に特化した教材です。
移調、リズム変奏、アーティキュレーションの変更など、さまざまな練習法を組み合わせることで効果が倍増します。
初級後半〜中級・上級でそれぞれのレベルで取り入れることで、より幅広い表現力につながります。
ソナチネアルバム
クレメンティやクーラウなど、古典派の作曲家によるソナチネが収録された教本です。
曲の構成(形式・調性・モチーフなど)を分析しながら演奏することで、音楽的理解も深まります。
ツェルニー30番との併用もおすすめです。
バッハ インベンション
2声から成るポリフォニー音楽を学べる名教材です。
「ホモフォニー」に慣れている方にとっては、新しい挑戦となりますが、音楽の構成力や独立した指の使い方を養うのに最適です。
導入として「プレ・インベンション」などを使うと、よりスムーズに取り組めます。
上級者に向けたピアノ教本|高度な技巧と音楽表現へ
中級までの基礎をしっかりと積み重ねたら、いよいよ上級教本に挑戦する段階です。
ここでは、演奏技術だけでなく、作曲家ごとの様式理解や芸術的な解釈も求められます。
ソナタアルバム
ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンのソナタが収録された上級者向けの教本です。
古典派の奏法や形式感を深く学び、演奏表現に磨きをかけることができます。
「ソナチネアルバム」から自然な流れで進められます。
バッハ シンフォニア
3声からなるポリフォニックな構成を学ぶためのバッハの練習曲です。
インベンションよりも複雑で、声部を独立して捉える力が求められます。
バロック音楽の解釈やアーティキュレーションの幅が広がります。
クラーマー=ビューロー 60の練習曲
ツェルニーの上位教材としても用いられる練習曲集です。
1曲ごとに明確なテクニックが盛り込まれており、曲想も豊かで演奏会でも映える内容です。
「ツェルニー40番」修了後の教材として適しています。
モシュコフスキー 15の練習曲
優れた音楽性とテクニックを両立できる練習曲集で、ショパンの作品に備えるにも最適です。
曲の美しさと難易度のバランスが取れており、モチベーションも保ちやすい点が魅力です。
ショパン エチュード集
「エチュード=練習曲」とは思えないほど芸術性が高く、演奏会でもよく取り上げられる名曲揃いです。
別れの曲、革命、黒鍵などの名作を通じて、感情表現と技巧の融合を体感できます。
全曲を網羅する必要はなく、得意な曲や課題に応じて選んで取り組むのがおすすめです。
ピアノ教本と併用して好きな曲も取り入れよう
教本を中心に学ぶのは大切ですが、それだけではモチベーションが下がってしまうこともあります。
そんなときは、自分の好きな曲を練習に取り入れて、楽しさを感じながらピアノを続けていきましょう。
教本+好きな曲でバランスよく練習
練習の中心を教本にしつつ、好きなポップスやアニメソング、クラシックの名曲などを並行して弾くと、楽しさが倍増します。
発表会や家族の前で披露する曲を目標にするのも効果的です。
楽譜の選び方と活用方法
1曲だけ弾きたい場合は、楽譜のダウンロードサイトを活用するのが便利です。
無料で提供されているサイトや、サブスクリプション形式でさまざまな楽譜を試せるサービスもあります。
自分のレベルに合ったアレンジ譜を選ぶことで、無理なく弾ける達成感も得られます。
「ピアノ=勉強」というイメージにとらわれず、音楽を楽しむ気持ちを忘れないことが上達への近道です。
教本と自由曲を上手に組み合わせながら、長くピアノを楽しんでいきましょう。