ヤマハ5歳児の練習問題:父のちょっかいに負けずに楽しく練習したい

ヤマハ音楽教室に通う5歳のお子さまが、両手で弾くようになり、練習中のお父さまのからかいが原因で練習を嫌がるようになってしまいました。普段からレッスンにはお母さまがご一緒されることが多いのですが、お父さまもレッスンに来られることもあります。今まではお家での練習は1週間で4・5日熱心に楽しくされていたのですが、からかわれるようになり練習したくないと言うようになりました。心配なことですよね。初めのうちは、お子さんも「もー」と軽く流していたのでお父さまにとっては、未だにじゃれあいだといって状況が悪くなったのがわかっていないようです。お父さまに悪気がないご様子なのが、さらに難しいところです。お子さま一人で練習をすると、レッスンで習っていない弾き方になるので、もう少し親子一緒に練習をする方がいいのですが、お母さまもお仕事等で忙しく一緒に練習ができません。

このような状況から、お子さまが再び音楽を楽しみ、ご家庭での練習が実りあるものになるための方法を私なりに考えてみました。

1. 問題の核心:なぜ「からかい」が練習の妨げになるのか?

まず、お父さまご自身に「からかい」のつもりがなくても、5歳のお子様にとっては大きなプレッシャーや苦痛になっている可能性を理解することが重要です。

  • 自己肯定感の低下: 幼児期は「できた!」という達成感が自己肯定感を育む大切な時期です。からかわれることで、「自分はうまくできない」「パパは自分のことを笑っている」と感じ、ピアノや練習そのものに対する自信を失ってしまいます。
  • 安心感の欠如: 本来、家庭での練習は安心できる環境で行われるべきものです。最も身近な存在である父親からのからかいは、その安心感を揺るがし、練習時間を緊張や不安の時間に変えてしまいます。
  • モチベーションの喪失: 「どうせからかわれるから」と、練習への意欲が削がれてしまいます。特に、難しい両手奏に挑戦し始めたばかりのデリケートな時期には、細やかな励ましが必要です。
  • 誤った学習: からかわれることを避けるために、ふざけたり、適当に弾いたりするようになる可能性があります。これが「習っていない弾き方」につながり、先生からの注意を受ける一因になっているのかもしれません。

お父さまは、愛情表現の一つとして、あるいは場を和ませるつもりで接しているのかもしれません。しかし、その意図がお子さまには伝わらず、逆効果になっていることをまず認識することが第一歩です。

2. お父さまとのコミュニケーション:伝え方の工夫

お父さまに悪気がない場合、直接的に「からかうのはやめて」と伝えても、なぜそれが問題なのか理解しにくいかもしれません。次の事を意識して、お父さまと話し合ってみましょう。

  • タイミングを選ぶ: お互いにリラックスしている時間を選びましょう。練習直後や疲れている時は避けます。
  • 「私」を主語にする(アイメッセージ): 「あなたはいつもからかうからダメなのよ」という「あなた」を主語にした言い方(ユーメッセージ)は、相手を責めているように聞こえがちです。「私は、〇〇(お子様の名前)が練習中に△△(具体的なからかいの言動)をされると、悲しそうな顔をするのが気になるの」「〇〇がピアノを嫌いになってしまわないか心配なの」というように、「私」の気持ちや観察した事実を伝えます。
  • 具体的な行動と影響を伝える: 「この間、両手の練習の時に『わー、カニさんみたいだね!』って言ったら、〇〇が顔をしかめて練習をやめちゃったでしょう?あの子、最近パパと練習するのを嫌がるようになってきちゃったみたいなんだ」など、具体的なエピソードを交え、お子さまの反応や練習への影響を伝えます。
  • お子様の気持ちを代弁する: 「先生に褒められるように頑張っているのに、パパに笑われると悲しいんだと思う」「難しいことに挑戦している時は、真剣に応援してほしいんじゃないかな」など、お子さまの気持ちを推測して伝えます。
  • 協力をお願いする姿勢で: 「〇〇がもっと楽しくピアノを続けられるように、一緒に協力してほしいのだけど、どうかな?」と、問題解決のパートナーとして協力を求める形で話すと、受け入れやすくなります。
  • 肯定的な関わり方を提案する: からかいの代わりに、どんな言葉かけや態度が望ましいかを具体的に提案します。「『この指の動き、難しいのに頑張ってるね!』って具体的に褒めてあげると喜ぶんじゃないかな」「間違えても、『大丈夫だよ、もう一回やってみようか』って優しく声をかけてあげてほしいな」など。

3. 自宅での練習環境を見直す:親子で楽しむ工夫

お父さまの関わり方と並行して、練習環境全体をよりポジティブなものに変えていくことも大切です。

  • 練習時間のルール作り:
    • 短時間集中: 5歳のお子さまの集中力は長く続きません。1回の練習は10分~15分程度を目安に、無理強いしないようにしましょう。「〇時になったらおしまいね」と事前に伝えておくと見通しが持てます。
    • 毎日少しずつ: 長時間まとめてよりも、毎日短時間でも楽器に触れる方が習慣化しやすく、効果的です。
    • 機嫌の良い時に: 疲れている時や眠い時を避け、比較的機嫌の良い時間帯を選びましょう。
  • 「遊び」の要素を取り入れる:
    • ごっこ遊び: 「コンサートごっこをしよう!パパとママがお客さんね」と、発表の場を設ける。
    • クイズ形式: 「この曲のタイトルなんだっけ?」「この音なあに?」など、音楽的な要素をクイズにする。
    • 褒め言葉シールやスタンプ: 1曲弾けたらシールを貼る、スタンプを押すなど、目に見える形で達成感を味わえるようにする。
  • 具体的な目標設定と「できた!」の共有:
    • スモールステップで: 「今日はこの2小節だけ完璧に弾けるようにしよう」「右手だけゆっくり最後まで弾いてみよう」など、達成しやすい小さな目標を設定します。
    • 過程を褒める: 結果だけでなく、「前より指の形が良くなったね」「ゆっくり丁寧に弾こうと頑張ったね」など、努力や過程を具体的に褒めます。これが「習っていない弾き方」への修正にも繋がります。
    • 「できた!」を一緒に喜ぶ: お子さまが目標を達成したら、大いに褒めて一緒に喜びましょう。この共感が、お子さまのやる気を引き出します。
  • お母さまができること、お父さまに任せたいことの分担:
    • お母さまが一緒に練習できる時は、じっくりと曲の理解を深めたり、新しい部分の練習をサポートしたりする。
    • お父さまには、お母さまが教えた部分の反復練習や、リズム打ち、歌を歌うなど、プレッシャーの少ない部分をお願いしてみるのも良いかもしれません。その際、具体的な関わり方(褒め方、声かけの仕方)を事前に伝えておきましょう。
  • 「習っていない弾き方」への対応:
    • 先生からのアドバイスを共有: レッスンで先生に注意されたことは、具体的にメモしておき、練習の際に「先生がここをこうするともっと良くなるって言ってたね」と優しく伝えます。
    • ヤマハの教材を活用: ヤマハの教材には、お手本となる演奏のCDやDVDがついていることが多いです。それを一緒に聴いたり見たりして、「この音と同じように弾いてみようか」と促すのも効果的です。
    • 焦らず、根気強く: 一度で直らなくても、何度も繰り返すうちに身についていきます。焦らず、できた時にたくさん褒めてあげましょう。
    • 一人で練習する時間も尊重(ただし短時間): 短時間であれば、一人で自由に弾く時間も創造性を育む上で大切です。ただし、変な癖が定着しないよう、その後で一緒に確認する時間を設けるのが理想です。録画しておいて後で一緒に見るのも良いかもしれません。

4. ヤマハの先生との連携

可能であれば、ヤマハの先生に現状を相談してみるのも良いでしょう。

  • 家庭での練習の悩みを伝える: 「父親の関わり方で悩んでいる」「家で練習すると変な癖がついてしまうことがある」など、具体的に相談します。
  • 先生からのアドバイスを求める: 先生は多くの子どもたちとその保護者を見てきています。家庭練習を円滑に進めるためのアドバイスや、お父さまへの上手な伝え方についてヒントをもらえるかもしれません。
  • レッスンでの声かけをお願いする: 先生からお子さまへ「お家でパパやママと練習する時、どんな風に褒めてもらうと嬉しいかな?」など、間接的にお父さまの関わり方を考えるきっかけを作ってもらうこともできるかもしれません。また、レッスン中に「パパも〇〇ちゃんが頑張っているのを応援していると思うよ」といった言葉をかけてもらうことで、お子様の気持ちが和らぐこともあります。

5. お子様の気持ちを最優先に

最も大切なのは、お子さまが音楽を楽しいと感じ続けられることです。

  • 無理強いは禁物: どうしても練習を嫌がる時は、一旦お休みする勇気も必要です。無理強いは逆効果です。
  • 音楽を楽しむ機会を増やす: ピアノの練習だけでなく、家族で音楽を聴いたり、歌を歌ったり、コンサートに出かけたりと、音楽に触れる楽しい経験を増やすことで、音楽全体への興味関心を高めることができます。
  • お母さま自身も楽しむ: お母さまが音楽を楽しんでいる姿は、お子さまにとって良い影響を与えます。

まとめ

お父さまのからかいは、お子さまのデリケートな心にとっては大きな負担となり、音楽への意欲を削いでしまう可能性があります。まずは、お父さまにその影響を理解してもらうための丁寧なコミュニケーションを試みてください。そして、ご家庭での練習環境を、お子さまが安心して楽しく取り組めるものへと見直していくことが重要です。

焦らず、お子さまのペースに合わせて、スモールステップで成功体験を積み重ねられるようサポートしてあげてください。お母さまお一人で抱え込まず、お父さまやヤマハの先生とも協力しながら、お子さまが音楽と共に豊かに成長していける環境を築いていかれることを心から願っています。

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