「もっと弾くと思ってた…」保護者のモヤモヤは自然なもの
ヤマハ音楽教室「ぷらいまりー1」に通い始めて2ヶ月。リズムステップや歌詞唱などの活動はあるけれど、「弾く」場面が少なくて、こんな感じで大丈夫?と感じていませんか?
ヤマハの公式サイトには、「無理なく“弾く”経験を積み重ねる」と書かれており、「もっと鍵盤を使う時間が多いのでは?」と期待した方も多いはずです。でも、実は“まだあまり弾かない”のは、ヤマハの幼児教育の大切な狙いに基づいたものなのです。
「ぷらいまりー1」で身につけるのは“音楽の根っこ”
ヤマハ音楽教室は、世界中で実践されている「音楽を母語のように学ぶ」教育法を基盤にしています。そのため、ぷらいまりー1(年少)ではいきなり技術的な演奏を求めず、「音楽の根っこ」を育てることに焦点をあてています。
では、その「根っこ」とは何でしょうか?
1. 歌詞唱(ドレミで歌う) → 「音感」の根っこ
ただ歌っているように見えますが、これは絶対音感や相対音感を育てるための、最も効果的なトレーニング「ソルフェージュ」です。自分の声で「ド」の高さ、「レ」の高さを正確に歌えるようになることで、頭の中に「音の物差し」が作られていきます。この「物差し」があるからこそ、将来、聴いた音をすぐに弾けたり、楽譜を見てその音がどんな高さかイメージできたりするようになります。指先だけで音を覚えるのとは、音楽の理解度が全く違ってくるのです。
2. リズムステップ → 「リズム感」の根っこ
音楽の三大要素は「メロディー」「ハーモニー」「リズム」です。リズムステップは、音楽の心臓部である「リズム」を、頭で理解するのではなく、全身で体感し、身体に染み込ませるための活動です。大きなマーチのリズム、軽やかなスキップのリズムを足で感じること。この経験が、将来「ノリの良い演奏」や「生き生きとした演奏」に直結します。
3. 鑑賞 → 「表現力」の根っこ
様々なジャンルの質の高い音楽を「聴く」経験は、お子様の心の中に「表現の引き出し」をたくさん作ってくれます。「この曲は楽しい感じ」「こっちは悲しい感じ」「この音はキラキラしてる」…たくさんの音楽シャワーを浴びることで、「自分はこんな風に弾いてみたい!」というイメージの源泉が豊かになります。これがなければ、いくら指が速く動いても、人の心を動かす演奏はできません。
なぜ「まだあまり弾かない」のか?
「ぷらいまりー1」は、無理に鍵盤のテクニックを教える段階ではありません。年少期は手指の発達や集中力にも個人差が大きく、楽器の操作に特化すると逆に音楽そのものを楽しめなくなることもあります。
それよりも、以下のような力を土台から築くことを大切にしています。
- 音を聴いて覚える力(聴音力)
- 音楽に合わせて動くリズム感
- 歌うことで養うピッチ感覚
- 「気持ちをこめて表現する」体験
これらはすべて、将来「音を聴いて弾く」「心をこめて演奏する」ための大事な準備段階なのです。
1年後、どんな力が育つの?
「ぷらいまりー1」を1年間しっかり取り組んだお子さんは、以下のような“音楽の芽”が育っていきます。
身につく力 | 内容 |
---|---|
聴く力 | 短いメロディを耳コピしたり、先生の弾いた音をまねしたりできるように |
歌う力 | メロディにピッチをつけて歌い、音の高低を自然に理解 |
リズム感 | 手拍子やステップでテンポ・拍感を感じながら表現 |
想像力 | 音を聴いて情景を思い浮かべたり、自分なりに表現したりする力 |
鍵盤との親しみ | 指の形や場所を少しずつ覚え、「弾いてみたい!」が生まれる |
歌うように弾けるようになっている: レッスンでドレミで歌い込んだ曲の、簡単なメロディーを片手で弾けるようになっています。ただ音を追いかけるのではなく、自分で歌うのと同じ感覚で、自然な抑揚をつけて演奏しようとします。これは、ソルフェージュで「音感」の根っこが育った証拠です。
リズムに乗って弾けるようになっている: 聴き慣れた曲に合わせて、リズムに乗って楽しく身体を揺らしながら演奏します。リズムステップで「リズム感」の根っこが育ったからこそできることです。
イメージを持って弾こうとする: 「ここはぞうさんみたいに、どっしり弾く!」「ここはちょうちょみたいに、ひらひら~」など、自分なりのイメージを持って音を出そうとします。鑑賞で「表現力」の根っこが育った成果です。
このように、まだ目に見える「演奏技術」としては実感しにくくても、見えない「音楽の土台」は着実に築かれていくのです。
不安を感じたら…こんな視点で見てみて
親としては「何かを“できるようになった”実感」が欲しいもの。でも、幼児期の音楽教育では「できるようになったこと」よりも「音楽をどう感じているか」に目を向けてみてください。
- 家で鼻歌を歌っていたら◎
- 音楽に合わせて自然と体が動いていたら◎
- 教室で先生の演奏に目を輝かせていたら◎
これらはすべて「音楽が育っているサイン」です。
まとめ:今は“音楽の芽”を育てる大切な時期
ヤマハ音楽教室「ぷらいまりー1」は、“弾く”よりも“聴く・感じる・楽しむ”を軸にしたカリキュラムです。一見するとレッスンの成果が見えにくく、戸惑うこともあるかもしれません。
しかし、音楽の世界で最も大切な「心で感じる力」は、まさに今この時期にしか育てられない宝物。安心して、音楽の根っこをじっくり育ててあげてください。
2ヶ月という期間は、音楽という長い旅においては、まだ出発ゲートに立ったばかりです。特に3~4歳という年齢は、何よりも「音楽って楽しい!」と感じることが、今後何年も続けていくための原動力になります。
今は「どれだけ弾けるか」という目に見える成果を求めるよりも、
- お子様がレッスンで歌った歌を、お家でも口ずさんでいるか
- 音楽に合わせて楽しそうに身体を揺らしているか
- 先生やお友達と、音楽の時間を心から楽しんでいるか
といった点に目を向けてみてください。それこそが、今この時期に最も大切で、順調に成長している証です。ヤマハのメソッドを信じて、どうぞ焦らず、お子さまと一緒に音楽のシャワーを浴びる時間を楽しんでください。その楽しい時間の積み重ねが、1年後、お子さまならではの豊かな演奏表現へと必ず繋がっていきます。